2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について48

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について 六、『舞姫』とは 『舞姫』とは一体、何であろうか。すでに述べてきたように、『舞姫』のテーマが「恋愛か功名か」というところにないことはわかって頂けたと思う。 「まことの我」は、エリート官吏の豊太郎をエリス…

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について47

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について 五、偽りの自己とその結果がもたらしたもの 豊太郎の手記では、「まことの我」が顕れた後に「いままでの我」を「余が幼き頃より長者の敎を守りて、學の道をたどりしも、仕の道をあゆみしも、皆な勇氣ありて能くしたる…

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について46

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について 四、「人知らぬ恨」と「まことの我」と「一点の彼を憎む心」とは同じもの 冒頭の独白に「人知らぬ恨」が出てくる。その正体がわからなくて、豊太郎は悩まされている。しかし、その正体を知ろうとして、手記を書き始…

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について45

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について 第六章 「舞姫」のテーマについて 一、恋愛か功名か 忍月が定立した「恋愛か功名か」というテーゼは、本当は成立していない。豊太郎は真の愛を知らないのである。したがって、「恋愛」がなくなれば「功名」しか残らな…

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について44

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について 第五章 省筆について 鷗外は豊太郎が手記を書くにあたり、『舞姫』において「いで、その槪略を文に綴りて見む」と意気込んで書いたものである。「槪略」と書いているのだから、無駄な部分は極力削り取られているはず…

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について43

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について 第四章 陪賓及びエリスについて 忍月は『舞姫』評において、エリスについてはかなりがっかりしたと書いている。 「予は客冬「舞姫」と云へる表題を新聞の広告に見て思へらく是れ引手数多の女俳優(例之ばもしや草紙…

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について42

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について 五、再、気取半之丞に与ふる書 鷗外は「再、気取半之丞に与ふる書」において、「主人公は重要主宰の地位に立つが故に人物若くは身分職業を以て小説の題名となすときは、主人公若くは主人公の身分職業を撰ぶべしと。…

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について41

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について 第三章 『舞姫』という題名について 全体的に「舞姫論争」は、この鷗外が付けた『舞姫』という表題が適切なものかどうか、というやり取りにほぼ終始する。 一、『舞姫』評における忍月の主張 忍月は『舞姫』評の中で…

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について40

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について 二、四変する豊太郎 忍月にすれば、あっちではこう言っているのに、こっちでは違うことを言っているように思うかも知れないが、鷗外は四変する豊太郎については「気取半之丞に与ふる書」で詳細に説明しているので、こ…

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について39

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について 第二章 主人公について 主人公を論じる時に、通常は一般論から入り、個別の議論になるところだが、舞姫論争では、豊太郎という個人の性格・性質から論じて、やがて一般も論ずるという経過を取っている。 ところが、…

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について38

『舞姫』‐いわゆる「舞姫論争」について 第二部 「舞姫論争」とは何であったのか。「舞姫論争」が取り残したもの。 第一部では、忍月と鷗外の論争のやり取りをほぼ再現しつつ、適宜講評を加えた。第二部では、この論争にいて考察したところを述べることにす…