『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて 四、太田豊太郎の年齢を満年齢とすることについて 私は当初、太田豊太郎の年齢については、「数え年」であろうと「満年齢」であろうと、『舞姫』というテクストに表記された年齢をそのまま受け入れればい…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて 三、「満年齢」派の豊太郎の年立て 『舞姫』の豊太郎の年齢を「満年齢」として読んでいるのか明示されてはいないものの、森鷗外との対比において、鷗外の年齢を「満年齢」として記述されているものがある…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて ①から④までに見てきたことを総括すればこうなる。 明治二十一年元旦早々に、「まことの我」が豊太郎に顕れてからすぐに、豊太郎から官長に対する報告書は、官長の期待するものではなくなった。その報告書…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて ③豊太郎の免官 官長は、二月上旬から立て続けに豊太郎から「法制の細目に抅ふべきにあらぬ」という書を受け取り不快に思っていたところに、学問の岐路に走っていることも知り憎らしくもあったが、仕事自…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて ②エリスとの邂逅 エリスとの出会いは一月中でなければならない。なぜなら、エリスが豊太郎の免官の直接的原因だからである。このエリスと付き合っているという告げ口が官長の耳に入り、①の豊太郎から寄せ…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて （六）小泉浩一郎説と長谷川泉B案説との比較・検討 小泉浩一郎氏は、長谷川泉B案を承知の上で関良一説を支持し、「五年前」を「四年前」と読み替えている。 それは、前記④に述べたように、「自我の覚醒、…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて （五）小泉浩一郎説|関良一説支持 小泉浩一郎氏の豊太郎の年立てについては、『新 日本古典文学大系 明治編 25 森鷗外集』（岩波書店・二〇〇四年七月二十九日第一刷発行）所収の『舞姫』の補注「補注二 …

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて （四）長谷川泉B案説-2 長谷川泉氏の①～⑨までの考察の結果、「太田豊太郎は明治二十年に二十五歳の齢を重ね、おそらくはその秋にエリスとの交情を体験し、親友相沢の斡旋による通信員生活に入り、翌明治…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて （四）長谷川泉B案説-1 長谷川泉氏のB案説は、前述したA案説を途中まで踏襲するのだが、表を提示する直前になり、「このような『舞姫』年立考に対して、関良一の新見があらわれた。「舞姫（近代小説鑑賞…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて （三）関良一説 関良一氏は、前記二説を踏まえた上で、私見を述べている。 これも長くなるが引用する（初出「舞姫（近代小説鑑賞・五）」（昭和三十四年十一月『国文学 言語と文芸』）（本稿は「昭和四十…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて （二）長谷川泉A案説 長谷川泉氏は二案がある。 先に記したように、今最も新しく発行されたものとして、『森鷗外『舞姫』作品論集』（クレス出版、二〇〇〇年十月二十五日発行）がある。これは、初出の「…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて 三、「数え年」派の人々の豊太郎の年立て 豊太郎の年立てを、数え年で行っている、あるいはそう思える主な論説について、考察することにする。 （一）桑島昌一説 桑島昌一氏の「鷗外と『舞姫』について」…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて 二、各論者の豊太郎の年立ての一覧 豊太郎の年譜に対する各論者の見解を、三と四において詳述するが、その前に論点が分かりやすいように、前掲した表と照らし合わせられるように、各論者が提示している豊…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて 次に豊太郎の年齢から、『舞姫』の物語内の時の流れを追ってみることにする。 ここではテクストに記された年齢をそのまま（「数え年」や「満年齢」のことは、いったん外して）に受け取って照合していくこ…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて 一、太田豊太郎の仮年譜 各論者の太田豊太郎の年立てについて見ていく前に、論点を分かりやすくするために、太田豊太郎の年齢を「数え年」か「満年齢」かで区別せず、『舞姫』のテクスト内に記された年齢…

『舞姫』|主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて 凡例 ・『鷗外全集 第一巻』（森林太郎、岩波書店、昭和四十六年十一月二十二日発行）所収の『舞姫』を底本とし、「原文」と記している場合は、この底本である『舞姫』を指す。底本からの引用に際して、…

『舞姫』ーー主人公・太田豊太郎の年齢と年立てについて 真堂彬 はじめに 『舞姫』には、主人公である太田豊太郎の年齢と、作品後半部分に、突然出現する「明治廿一年の冬は來にけり」という<時>の明示があり、『舞姫』に関する論文などでは、太田豊太郎の年…

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